広島大学大学院工学研究科機械システム専攻 機械要素学研究室
平成10年度修士論文概要













各種ギヤ油が及ぼす円筒ローラ表面損傷への影響

M0980407 小川 健一

 低速高荷重の条件で歯車の歯面に生じる損傷には,リップリング損傷,リッジング損傷等がある.リップリングとは,歯面のすべり方向に魚のうろこのように見える周期的な波状の模様が現れる損傷であり,リッジングとはすべり方向に魚の尻尾の形にみえるスジ状の模様を示す損傷とされている.

 本研究では,歯車のリップリング損傷に対する基礎研究として浸炭焼入れした円筒ローラを使用し,アムスラー型摩耗試験機により低速度,高荷重のもとでころがり−すべり接触させて実験を行った.潤滑油は,油温を100℃に制御してSAE90の粘度のギヤ油を5種類(S-P系ギヤ油4種類とその基油)を使用し,それらがどのようにリップリングの発生に影響を及ぼすかを円筒表面の観察や表面粗さ,表面硬度,摩耗量の測定をもとに実験的に考察した.

 なお本研究は当初,リップリング損傷の実験のみを目的としたが,ある実験条件下ではリッジングと思われるような表面損傷も観察されたので,これも含めて以下に結果を示す.

1) 5種類のギヤ油のうち,基油ではいくつかの条件下でリップリングが発生したが,S-P系の添加剤を加えることでリップリングをほぼ防止できた.

2) あるギヤ油を用いたいくつかの条件下において,明らかに通常のすり傷とは違うリッジングのような表面損傷が発生しているのが観察された.

3) 100℃で損傷のみられなかったあるギヤ油で,油温をさらに高めることでリッジングのような表面損傷が確認された.

4) 各種ギヤ油中に含まれる添加剤成分の違いによりローラ接触面の極圧皮膜形成が異なるため,同一条件の実験においてもローラ表面の状態はかなり異なる.

5) ボレート(ホウ酸のカリウム塩)を含有したS-P系ギヤオイルでは,表面損傷は認められず,耐摩耗性も優れていた.
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