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外歯2K-H型遊星歯車機構のセルフロック実験
0781013 植田 敬一
遊星歯車機構は,通常の歯車列と比べ,構造が小型軽量で大きな変速比が得られることなどから,減速装置または増速装置として多くの分野で使用されている.しかしながら,これらの遊星歯車機構の効率は意外と低いことがあり,ときには回転不能の状態(セルフロック現象:Self-Locking)が発生することもある.しかし,遊星歯車機構におけるセルフロック現象についての研究は数少なく,ほとんど行われていない.
そこで本研究ではセルフロック現象について検討を行うために,まず,理論効率式を導出し計算を行った.さらに,小太陽歯車と大太陽歯車の歯数差(歯車のモジュールが異なる場合はモジュールと歯数の積の差,以後歯数差と称する)の異なる4種類の試験歯車を使用し,起動時の過渡状態を加味した条件で,小太陽歯車および大太陽歯車をそれぞれ入力要素とした場合の基準効率(キャリアを固定した状態での効率)を測定した.さらに,セルフロック現象について実験的に検討するため,小太陽歯車あるいは大太陽歯車を入力要素とし,他方の太陽歯車を固定し,キャリアを出力要素とした場合においてセルフロック現象が発生するかどうかを調べ,発生しない場合には効率を測定した.以下に得られた結果を要約する.
(1) 計算の結果,小太陽歯車と大太陽歯車の歯数差が0に近づくと効率が負になっていく.この効率が負となる領域でセルフロック現象が発生する.また,歯数差が大きくなると,小太陽歯車が入力の場合の効率は基準効率に近づくが,大太陽歯車が入力の場合には効率は100%に近づく.
(2) 小太陽歯車と大太陽歯車の歯数差が小さい場合はセルフロック現象は起こりやすいが,基準効率が小さくなると歯数差が大きくてもセルフロック現象が起こる可能性があることが計算より明らかとなった.
(3) 起動時における基準効率は,入力軸回転数の上昇に伴って増加する.また,定常状態での基準効率は負荷トルクが大きいほど高い値を示す.
(4) 小太陽歯車と大太陽歯車の歯数差が0の場合は,セルフロック現象が発生した.それよりも若干歯数差を大きくした実験では,試験機をモ−タで回転させようとすると過負荷保護装置が作動して遊星歯車を回転させることができなかったが,手を使って駆動した場合にはセルフロック現象が発生することなく回転することがわかった.さらに歯数差を大きくした場合には,セルフロック現象の発生はみられなかった.この場合の効率は,負荷トルクの上昇に伴い上昇している.また,同じ負荷トルクをかけた場合,効率は大太陽歯車入力のほうが小太陽歯車入力の場合よりも高いことが確認された.
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